Stellar Lab Radio 特別号ゲスト:室伏広治さん

今回のStellar Lab Radioでは、SS-F初の物理拠点「SS-F Lighthouse Lab(ライトハウス・ラボ)」の開業を記念し、東京科学大学副学長・室伏広治氏を迎えた特別対談をお届けします。
研究者の「好奇心」はどこから生まれ、どのように新たな発見へとつながっていくのか。
その根源的な問いを手がかりに、本対談では、スポーツ・生命科学・宇宙・身体・社会といった、一見すると遠く離れた領域を横断しながら、既存の枠組みにとらわれない研究のあり方を探っていきます。
異なる分野を行き来する中で見えてくるのは、「知」が生まれる瞬間のダイナミズムと、個人の探究心が社会へと接続されていくプロセスです。
「場を変えると科学はどう変わるのか?」
「なぜ今、“ヒューマンサイエンス”が重要なのか?」
こうした問いに向き合いながら、研究環境そのものの意味や、これからの時代に求められる研究者像についても、深く掘り下げていきます。
横浜・関内に誕生した“知の灯台”を舞台に、分野や組織の境界を越えて広がる新しい科学の可能性、そして次世代の人材がどのように育まれていくのか。
未来へとつながる視点を提示する特別回です。
視聴はこちら
4/17 SS-F Lighthouse Lab開業!
武部: はい、今回のSS-FのLighthouse Labというのがオープンすることになりましたので、ここで迎える第1回目のゲストとして、東京科学大学の「GENTEN研究センター」のセンター長そして、副学長もされている室伏広治さんに今日来ていただきました。ぜひ色々議論したいなと思っています。
室伏: はい。
武部: 今日はありがとうございます。
室伏: ありがとうございます。素晴らしい施設で驚きました。
武部: ありがとうございます。
室伏: 夢が叶った感じがします。
武部: そうですね。本当にいつもこう、変なサイエンスをどうやってやっていくかって議論させてもらっていて。最近はよく水と油なんていうキーワードで議論させてもらったりもしてます。ちなみに、私と室伏さんとの関係性は、室伏さんがスポーツ庁の長官されていた時にいくつか機会をいただいて、議論をするようになったんですけども。
室伏: そうですね。
武部: そこから、いろんなところで、考え方だったり、研究の向き合い方に共感するところがあって、勝手ながら僕もファンになったんです。
室伏: 武部先生、まあ有名なところでいうと、イグノーベル賞を取られたりとか、ああいうサイエンスって、やっぱり日本人にとってすごく大事…私は大事だと思いますよ。
やっぱりサイエンスを広く社会に知ってもらうっていう意味でも、すごい大きな貢献だと思いますし、まさにこの横浜の地で、こういうサイエンスとスポーツと医学と、市民の皆さんに身近に感じてもらうようなラボを作られて、理想を追求されて、素晴らしいなと思います。
武部: ありがとうございます。
室伏: 今もやっていただいてますけど、スポーツと宇宙みたいな、そういったプログラムも一緒に、スポーツ庁とJAXAが調印して、トップアスリートと宇宙飛行士を一体的に育てていこうとか。また、地球上じゃない環境、宇宙空間であったりとか、月・火星をまた目指している中で、いかに環境に人間の体がどう適応していくかっていうヒューマンポテンシャルみたいなところもご参加いただいて、すごい、いろんな素晴らしいご意見をいただいています。本当に意欲的で、サイエンス、社会実装で、本当に素晴らしいと思います。

研究所は “場” を変えると何が起きるのか
武部: ありがとうございます。
ここの拠点を作る前段階として、すごく僕が感じていたのは、実はラボが未来館っていうお台場にあるミュージアムですね。そこに研究室が、サテライト拠点があって。
そこで一般の健康な方にたくさん来ていただいて、いろんな調査をしたり。例えば幸福度とか、僕は肝臓が専門なので、肝臓の評価をしたりとか。そういうのをしていくと、今まで全く知られてこなかった新しい気づきっていうんですかね?分子の発見とか、そういうものが出てくるっていうことに、すごく感動して。
サイエンスがすごく面白くなっていく瞬間って、やっぱり今まで対象にしてたものとか、当たり前に使ってた場所とかじゃなくて、ちょっと境界を越えて外に出てみたりとか、場が変わった時にすごい発想がガーッと来る、みたいなことをすごく感じるところがあって。
このSS-Fのラボの拠点も、大学とかいわゆる「研究所」みたいなところから外に出している。それも例えばここで言うと、スポーツ観戦にスタジアムに来た方もいたり、学生さんたちがたくさん向かい側で勉強してたり、いろんな人々が交錯する場のど真ん中に、こういうガチな研究所を置いてみたら、また新たな豊かな発想みたいなのが生まれるんじゃないかな?と、そんなことを思って。
名前が、そのフラッグシップとしての「灯台」を英語にして、「ライトハウス・ラボ」というスペースとして作ることになったんです。
室伏: まさにライトハウス(=灯台)になっていくような。
武部: そうですね。
室伏: やっぱりいろんな人が交流することで、新たなものが間違いなく生まれますし、それができるのは武部先生だから。そういうパワーで。

Stellar Science Labにて(SS-F Lighthouse Lab内施設)
研究者の“好奇心の質”の話
武部: いやあ、ありがたいですね。
室伏さんも、いつも僕が会話してて思うのは、例えば最近、僕はナメクジウオとかドジョウとかそういうのにハマってるんですけど。そういうものに対してめちゃくちゃ面白いねって言ってくださいますよね。
室伏: はい。
武部: 毎回、その現象って何?何?っていう風に関心を持って、ある時には、プレゼンの中にナメクジウオって出てきたり。
室伏: そうです。ヒューマンポテンシャル、人間の能力を拡張していくには、やっぱり他の生物を(辿る必要がある)。起源をたどれば、やはり他の生物と同じところにあったわけですから。
どういうところで、どういうふうに生命が生きて、それを次につなげていくか。劣悪な環境の中でもっていう発想があるって言ってましたけど、ドジョウだったり、そういったものが腸で呼吸するヒントになるとか、そういう発想は本当に面白いなと思います。
武部: ありがとうございます。
僕らもこうやって新しい挑戦を開始しますけど、室伏さんも、近々新たな活動を始めると思うんだけど、そこも実はそういう、生命の発想の根幹にあるものとかって起源になってたりしますか?
「GENTEN(=原点)リサーチ」という思想
室伏: 「GENTENリサーチセンター」といいまして、スポーツも何かあると基本に帰るって、大事なことですよね。
おそらくリサーチもやっぱり、研究者は研究に没頭はするんですけど、これって何のためにやってたんだって、どこかで立ち返らなければいけないところもあったりするので、そういう意味で、フィロソフィーでもあるんですけれども。
でも、そういった原始生物みたいなものも扱うっていうのは、私は今までスポーツだったり人々の健康というか、人の身体とかが多かったんですけれども、生物関係の研究も始めようとしていますし、幅を広げようと思っています。
武部: 予定している不思議な生物の研究とかありますか?
室伏: 我々の原点リサーチセンターに原点に助教で来られている金谷さんは、ヒドラの研究をしています。
武部: 本も書いて、すごく有名な方ですよね。
室伏: 私もその彼の考えというか、ヒドラっていうのは、1センチぐらいの川辺にいるような生物なんですけども、すごく再生能力が高くて。脳はもちろんないので、脳がなくても睡眠をするっていうことを提唱された方なんですけども、そういう方も来て。
睡眠を考えるときに、そもそも脳が形成される以前に、睡眠があったということになりますよね。なのでそうすると、睡眠って脳からソリューションを考えるだけではなくて、末端の方からも考えるみたいな発想も生まれてきます。
武部: そうですよね。
室伏: こういった方も来られているので、すごく、ぜひアドバイスいただいて。
武部: いやもちろん、喜んでという感じなんですけど。その「原点」っていう名前はもう、フッと思いつかれたんですか?
室伏: うーん…いや、でも先生ともいろんなディスカッションをしていて。
武部: そう、いきなりラインが来て、「原点って名前がよくないですか」ってきて(笑)。「いいですね」みたいな、なりましたよね。
室伏: やっぱりなんていうんですかね。やりたいことがたくさんあると、名前が長くなるじゃないですか。ヒューマンなんとか、ライフパフォーマンス…そうすると、何をやってるかわからなくなっちゃうんで、これって何だろうって考えて、日本名でいくっていうのもいいかな、と。

分野を飛び越える研究者の共通点
武部: いや、いいと思います、すごい。国際的に見たら、やっぱり日本の漢字からニュアンスが出てくるワードってすごく心を引くものがありますから。
やっぱりサイエンスってこう、面白いな、不思議そうだな、みたいな探求を煽ることがすごく大事だと思います。原点ってすごいわかりやすい、そういう意味では。フラッグシップでも、スポーツをやってて、スポーツの人っていう感じの室伏さんが、原点っていうセンターを作るって、ちょっとぶっ飛んでますよね。
室伏: そうですか?先生ほどじゃないと思いますけど。
武部: いやいや、僕も相当だとは思うんですけど、やっぱりすごいなと思ってます。
過去に、例えば私の業界だと、利根川進先生って、免疫グロブリンの発見でノーベル賞を取られたMITの教授がいますけど、彼なんかもう免疫でノーベル賞までとって、免疫やるのかなと思ったらまるっと変えて、脳科学に行って。脳科学の業界で、今はもう圧倒的に世界で有名な科学者になってますよね。そういう例ってすごく多くて、やっぱり何かパラダイムシフトを起こすような発見した人たちって、好奇心が絶えないからどんどん次のフィールドにジャンプすることを怖がらずにいますよね。
室伏: そうですか。
武部: でも、ここまで完成された人だと、もう怖いものは多分ないとは思うんですけど。普通の人は、やっぱりちょっと新しいフィールドを変えようかなとか、これまでの、例えば僕で言うと、iPSやってて、いきなり尻呼吸とか、ちょっと大丈夫?みたいな。
室伏: ハピネスですね。
武部: ハピネスもやってますからね(笑)。

身体のコントロールの “肝”は内臓にある!?
武部: ハピネスの話にいきますと、さっき睡眠が、脳がなくても起きる、末梢でコントロールするんだからそこに意味があるんじゃないかとおっしゃいましたけど、いや、本当に私もそれを思ってまして。
なんならもう、中枢神経って言い方がすごいコンフュージング(confusing)だなと思っていて、むしろ例えば肝臓とか血液とか、やっぱりそういうものが…
室伏: こっちの末端の方、内臓も含めて。意思があるっていうことですよね。
武部: そうですよね
室伏: で、脳も当然大事なんですけれども、脳って後付けしていることもありそうですけど、どうですかね?
武部: いやね、脳って極論、なくても、例えば生まれてくることはできますし、ヒドラみたいな生物もいるわけなので。生きるという根源っていうのは、むしろ内臓器によって支えられているってことはあると思っています。実はその医師の背景にある無意識のそのコントローラーっていうのは、内臓にあるんじゃないかなと思っているので
室伏: 1個共著で今出そうとしているのあるじゃないですか。
武部: いいですか?ぜひちょっと、室伏さんの口から。
室伏: 先生と意気投合したのは、私はその筋骨格系の運動器の方を中心にやっていましたけれども、その内臓の動きと、体の外の動きが、実は関係あるんだっていう研究ですよね。
武部: そうですね。
室伏: 内臓と言っても肝臓ですよね。だから、我々の体って肝臓に2キロ、大きい人だと3キロ近くあるのが右だけにしかついてないって、そうですよね。
武部: そうですね。
室伏: で、呼吸をするときに横隔膜を通してこう動いてるみたいなことですけれども、実はスポーツサイエンスの重心を定義する中で、剛体と見なしていろんな剛体リンク機構を作ってやったりしますけど、内臓の重さは無視されています。なので、内臓は一体どのくらい運動中に動くのかっていう研究はされてないので、そういうところに着目して。
武部: そうですね。
室伏: で、実際に私も昔あったハンマーとか体操の選手がぐるぐる体を回すときって、内臓がどうなってるのかっていうのは調べられてなくて、そんなのもできたら面白いですけど。単純に足の上げ下げをしたら、MRIをとってどうかっていうところで、意外とそのやはり足の上げ上げを上げ下げをするときに、内臓をコントロールして抑えられている人の外の機能がよくて、この止まった状態でリラックスしてこう、お腹で腹式呼吸をやるときに、逆に今度はよく内臓動く人の方が、外の機能がいいみたいな。
武部: なるほど。
室伏: やっぱり内臓の動きと外は、関係は間違いなくありそうです。
MRIが暴く内臓×運動
武部: 絶対ありますよね。
私もそのMRIのデータを見て、肝臓がここまでひしゃげたり、ここまで形を変えながら、体の中にあるって「えっ?」って思うわけですよ。
普通MRIっていうと、寝て、みんな動かないでくださいって言って、しかも特定の呼吸のタイミングでバサッと撮るみたいな。そういうのが基本だと思うので、もうだいたい同じ形の肝臓しか、今まで人生で医学の研究者として見てこなかったんですけど、あのMRI見たら、こんなぺちゃんってなったりとか。
いや、肝臓ってやっぱり血流がちょっとでも下がると、栄養足りないぞ、ってなって糖をいっぱい作るとかね。いろいろこう代謝のリワイヤリングみたいなことが起きるわけなので、あれだけの変動があったら血流も変わるし、肝臓もある意味騙されて、今度はじゃあ糖いっぱい作って、筋肉に栄養を補給するぞ!みたいな。そういう反応って絶対起きてると思うので。
室伏: 起きるし、その生学的な、そういった先生に言ったものだけじゃなくて、物理的に動くことも、メカニカルな振動とかで、東大の先生から、脳の方も細胞の間に水をこう振動させると通る図みたいなのがあったりとかありましたけども。
武部: そうですね、ありましたね。
室伏: メカニカルに動くっていうことも結構大事なのかもしれない。
武部: だから、やればできるみたいな概念って、やっぱり体を動かしているうちに臓器がアダプト(適応)して、それで能力が高まるみたいなことってすごいあると思うんで、こんなにもやられてないんだっていうのを、あの論文を見て気づかされたというか。すごく面白いなと思ったところです。
室伏: あれをスタートにね、またどんどんひら開けてくるといいですよね。
武部: いや、本当にそうです。
室伏: しかも脂肪肝の話もされてましたから、ヘルシーな肝臓の方がよく動くかもしれませんし、そのあたりは解明したいですよ。

Stellar Science Labの機材見学(SS-F Lighthouse Lab内施設)
なぜ健康な人のデータは少ないのか?SS-F Lighthouse Labが目指すヒューマンサイエンスとは?
武部: いや、本当にその通りです。
そのあたりも実は、僕らがここの場所(SS-F Lighthouse Lab)で研究を始めるにあたって、すごく大事にしていたところで。
っていうのは実はこのビル(BASEGATE横浜関内)って、下の階にはエンタメの子供用のエンタメ施設があったりライブビューイング・アリーナっていって、隣のスタジアムのスポーツ観戦を食事しながらできたりとかっていう、そういうエンタメもありながらも、上の階にクリニックがいくつかあって。
その中ですごく特徴的なクリニックの1つに、スポーツクリニック、横浜スポーツ協会というところがやっているクリニックがあって。
そこで、いわゆる僕らは医学部にいると、どうしてもやっぱり病気のある方とか、あるいは健康な高齢者の方とか、そういった方の情報はいっぱいあるんですけども、体動いている人、動かしている人のデータとか、全然ないじゃないですか。
室伏: そうそう。やっぱりこう幅広くあること、大事ですよね。
武部: そうなんです。
室伏: じゃないと立ち位置って分からないですよね。
武部: なのでコンセプトとしては、ヒューマンサイエンス(Human Science)っていうのを、1つのコアワードにして、この拠点を活用していこうと考えているんですけれども。これがペイシェントサイエンス(Patient Science)、病気の患者ではなくてヒューマンであるところって、すごく特徴があって。
上の階のそのスポーツクリニックさんと連携をすれば、例えばさっき言ったような、体を動かせる人がもっと動かすためにはとか、あるいはその人たちがもっとハッピーになるためには何ができるのかとか、そういう研究の対象自体の拡張が起こり始めて。
これまで病気しか考えてこなかった人が、逆に健康な方を考えてみたり、あるいはスポーツのことをやってた人たちが、今度は病気から分かってきたメカニズムを、分子とかメカニズムの部分で研究をしてみたり。
その交差点みたいなことがここで発生すると面白いなと思ったし、極論すると、こういうコンセプトって、別にこの場がモデルになればいいと思うんですけど。いろんなところで、ポテンシャルがある気がしているので、日本中に、世界中にこういう面白い対象者だったり、面白い人が集まるような場で、どんどん研究が広がるようなモデルができたらいいなというのがちょっと、願いとしてあったんです。
室伏: やっぱり刺激がないと、前に進まないですから。本当にすべてがね、思いが詰まった刺激の形ですよね。
武部: はい。ぜひ、そうしていきたいと思います。
室伏: 目の前で、野球も。
武部: そうですね。
室伏: 球場も隣に…
武部: 行かれたことありますか?
室伏: ありますよ。
武部: そうですか。あんまり聞いちゃいけないのかもしれないですけど、ファンの野球チームとかあるんですか?(笑)
室伏: あんまり。チームでっていうよりは、レッドソックスの吉田さんを見させていただいたりとか、個々って感じですかね。
武部: そうですよね。
室伏: どこかあるんですか?(笑)
武部: いや、僕はもう横浜在住だったら、刷り込みとして通学するときは、必ず「ウォー、ウォー、ウォー、ウォー、横浜ベイスターズ♪」っていうのを、もう頭に毎日聞いてたので、自然に三浦…ハマの番長とか、ベイスターズというの、やっぱり一番近い存在ではありました(笑)。
さっき実は、ここのビルは三井不動産っていうところがやってるんです。三井不動産さんって東京ドームのオーナーなので、ジャイアンツ。DeNA南場さんは、横浜ベイスターズです。どっちファンなんだ…みたいなのを2人で(先日の記者会見で話されていて)。
でもお互いやっぱりベイスターズも、ジャイアンツも、スポーツを通して街を元気にしていくっていうのは、本当に強調されているミッションとして思われていて、それは確かになっていうふうに、すごく豊かにできるツールだなと思いました。
室伏: やっぱり今あらゆるところで、今の野球の話もそうですし、Bリーグだったりとか、Jリーグ、アリーナもどんどん建っていってますからね。そういう中で、ただの体育館じゃなくて、観戦したりいろんなラボがあったりとか、そこにね。人を集客、交流人口を増やしていくというかそういう力がありますし、まさにそういう、街を活性化していくような拠点になりますよね、スポーツって。
武部: ちなみに室伏さんは、長官からこちらに、東京科学大に戻られて、これから人間を対象とした研究されると思うんですけど。
私たちもこのヒューマンサイエンスって拠点を持ちながら考えてますけど、ヒューマンサイエンスの路線に合いそうな研究のテーマで考えていること、あります?
室伏: いやー、もうたくさんやりたいことはありますけれども。
一応、人…もちろんスポーツやそういったものも対象にしますし、さらには人々の健康増進ですね。豊かになる心と体を持っていくことと、あとはやっぱり文化的な身体も大事で。スポーツ、体育、身体というものもあるけれども、脳とか動きとかですね。
武部: 面白いですね。
室伏: そういう文化的なところもあって、そちらも大事。そちらに関しても今、科学大学内の先生、脳の研究されている国際的な先生がいますので、スポーツの観戦と、やっぱり観戦することで幸福感を生むっていうのは、スポーツや文化の観戦の効果みたいなもの。
生物系はまた先生にいろいろアドバイスいただきたいんですけれども。ヒドラやそういった、ゲノムなんかも扱うようなことやると思うんですけれど、動物・物を扱った研究をすると思いますけれども、そういったことから人間の、やはりそれもヒューマンですよね。結びつくことが大事で、いろんな環境下に置かれても、乗り越えるような強い力を持てるような。そんなところに結び付くと良いなと思ってます。

BASEGATE横浜関内 タワー棟 8Fにある「YSAスポーツと医学のジム」からは横浜スタジアムが見下ろせる

SS-F Lighthouse Labと今後連携予定の「YSAスポーツと医学のジム」施設を見学。
「軽さ」が身体を変える:俵と紙風船の実験
武部: なるほど、いいですね。(例の)俵の研究は…
室伏: そうそうそう。すごくいいですよ。その辺も、よく言ってくれました。
俵の研究順調ですよね。我々って、この間もMITで、紙風船、俵の研究の話をして。
武部: 本当ですか。ぜひ、ちょっと簡単にご紹介ください。
室伏: 我々って、ジム…ここもジムあるんですけれども、ジムに行く目的って筋トレ。やっぱり重さの感覚なわけですよね。50キロとか30キロとか、1キロでも重さですよね。
武部: はい。
室伏: 重さがあるってことは、α繊維、γ繊維があって、γ繊維があまりにも過緊張すると、筋肉が硬直しちゃうんですね。γバイアスが働く。
武部: なるほど。
室伏: そういう状態だと、スポーツってパフォーマンスが良くないですよね。どれだけ力を上げるものを持ってても、試合の当日リラックスできない。γバイアスが働きすぎて。
それは重さに頼った筋トレの仕方をしているからであって、実はこういう、この、紙を感じられるかっていう話ですよね。
軽さをどう感じられるかっていうのは、ものすごく大きなテーマで。ジムに行けば行くほど使い方が弱くなる人、僕はいると思う。
武部: なるほど。
室伏: 見た感じは大きい人いますけれど、なぜかって筋肉がリラックスしてないってことは、伸長線の力はもう使えないですね。収縮したコンセントリックの動きしかできない。
筋肉はもう間違いなく最大限に引き延ばされて、もう切れるんじゃないかというところになるほうが、一番力を発揮するようになっていて。やっぱり使い方の最終的な極意は、おそらく軽さを感じられるか、みたいな。
これは全然、γ繊維。働かないはずですよねきっと。過緊張みたいなことは起こらないんですけれども、そういう原理を使って俵をあげると、上がらない人が上がったりとか、逆に上がらない人があるので、まずはマーカーつけてやってますけど、実験を。
武部: すごいですよね。
だから最初行った時はね、紙風船トレーニングってすごい提案されて。日本にも普及している、柔らかい、軽い、そういう風船をこうやった後に目をつぶって、ふっと持つと、重い俵が私とか、ほんと力のない女性でもできちゃうという、現象でしたよね。
室伏: そう、なんであんな俵を昔の人は60キロを担いだりという、女性でもね。(昔の人は)ジムに行ってないですから。
武部: いや、そうですよね。ジム行ってないですよね。じゃあ本当にずっと鍛え続けるだけじゃない、その使い方も…
室伏: そうですね。
武部: それは柔道の「柔よく剛を制す」っていう思想と近い?
室伏: 間違いない。近いと思います。

揺らぎが生む最適化?〜食べる/食べないのリズムが身体を鍛える
武部: 我々の業界で、代謝でも結構似たところがあって、ずっと食べないとやっぱりダメなんです。食べない、食べるとかを繰り返したり、量をちょっと減らして戻すみたいな振れ幅の方がやっぱり大事。なので、代謝もこう太ってるから、ずっと食べるのやめなさいじゃない。アプローチの方が大事だと思っていて。
メタボリックエラスティシティ( Metabolic elasticity)という、弾性っていうんですね。こう食べたり食べなかったり、食べたり食べなかったり、それで肝臓が鍛えられて、一番パフォーマンスが出てくる。
室伏: 食べる、食べないで鍛えられるっていうのは、胃との関係はどうなってるんですか?
武部: 胃っていうよりも、どちらかというと、小腸とかからの吸収が~~ですが。
室伏: 連動はして…胃、小腸。
武部: そうです。小腸と肝臓が完全に連携していて、だいたい小腸で、脂っこいものは大腸の近くでぐわっと吸収されるんですけれども、それが肝臓に届くと、肝臓が一気にその油をどういうふうに分配するかって決め始めるんです。
で、肝臓にたまれば脂肪肝だし、内臓脂肪とか、脂肪組織にたまれば肥満って形で見えてくる。こういう分配の法則が、ずっと例えば油を摂取しない状態でやり続けちゃうと、逆に肝臓のいろんな対応力が落ちていっちゃうんです。
さっきの、ずっと筋力で屈曲させてるだけだとダメっていう、すごい同じで。その今まで一辺倒にずっと抑えるとか、ずっとこれを我慢しなさいみたいな、そういう指導を医学ではしてきたし、今もしてるんですけども。どっちかというと、その弾力的に前後させるみたいな負荷のかけ方が…
武部: メカニカルな振動はどうですか?
室伏: いや、すごくあると思いますよ。
武部: これは先生に聞きたいんですけど、マラソンとか長距離走るときに、おなか痛くなるじゃないですか。
武部: そんなに走ってないです(笑)
室伏: 調子とかにもよりますよね。なる人がいて。それは横隔膜?だから肝臓なのかもしれないですけれども。どうですかね?
武部: 実は肝臓が捻転して、まあよく言われているのは、肝臓を止めている肝鎌状間膜ってすごいじん帯があって、それがこう引き連れると痛いっていうのは言います。いや、面白いですね。
室伏: どうやって直すんですか?それ。
武部: それは直し方ないんじゃないですか?っていうか、わからないと思います。でもちょっとさっき見学に行って…
室伏: それはそういう、神経があるんですね。
武部: あります。あとリガメントは、本当にじん帯と一緒なので、肝鎌状間膜っていうのはもう人体と同じですね、つってるので。できる限り、真ん中ら辺に固定されるようになってるんです。
あと、上の方に左右でまたじん帯があるので、そこがこうグッと引き伸ばされてるんだと思います。意外とそこが凝ってるみたいなことを、誰も気にしてないので。
室伏: なるほど。ほぐせますかね?
武部: だから、例えば、超音波でね、さっき…
室伏: 長距離速くなるんじゃないですか?
武部: いや、あるかもしれないですよね。そこをほぐして柔軟性を高めたら、あるかもしれないですよね。
室伏: よく理学療法士の先生が、大腰筋とか、腸腰筋とか。
武部: メジャーな菌がありますよね。
室伏: ちょっとこう、ぐっと指入れてほぐしたりしますけど、実は肝臓だったりして。
武部: いやでも、そういう観点でいうと、前に針とかもやられるっておっしゃってたじゃないですか。ああいうのも全然よく、メカニズムのレベルでは、十分に記述できてない概念なんですよね。
室伏: うん。だけど先ほどの先生の、内臓の針もそうですけども、多分…おそらく、そういう針を打つことだったり、そういうことで、自分の感覚を呼び起こすようなことだと思うんですけど。内臓もそれで、すでにコミュニケーションをとっているわけですよね。いろんな物質が出てきて。だから、深いですね。

縦割りでは見えない科学:大切にしたいイグノーベルの感覚
武部: 本当、深くて。最近2週間前ぐらいからセル(Cell)に出た論文で、ちょっと(室伏さんにも)送っちゃいましたけど。肝臓が運動したときに応答する、サイトカイン、ヘパトカイン、エクサカインというんですけど、エクササイズの物質。これが出ると、脳の血流が良くなって、認知症が改善しますという論文が出て。いや、全然ありそうなんですけど、全然やられてないですよね。
運動負荷で物理負荷で肝臓が元気になって、脳が良くなるって、もうフィールドが3つぐらい超えちゃってるんで。
室伏: だから、縦割りだとできないできないんですよ。
武部: できない。
室伏: やっぱりイグノーベルの感覚が大事なんですよ。
武部: そうかもしれないですね。イグノーベルの感覚が大事かもしれませんね、確かに。
大学で普通に動いている研究から、やっぱり一歩ちょっとその飛んだ考え方とか、発想が変わっちゃったりすると、やっぱりなかなかそれをこう継続的にサポートすることって難しいし、我々みたいな人は、多分勝手にそういうことを考えるんだと思うんですけど、次の世代でこれから研究やるぞみたいな人たちって、やっぱりその箱庭の中というか、その環境の中でやることを考えちゃいがちなので、一回こうネジ外すみたいなことって難しいじゃないですか。
そういうこう、多分、室伏さんみたいなタイプの研究をやる人って、今周辺にはね、すごくいい方、集められてたと思うんですけど。どうやったら継続的にそういう人を生み出したり、育てたりできると思いますか?
室伏: いや難しいですが、やっぱり研究のための研究っていうか、その先にこうできれば、社会だったりとか、人にインパクトを与えることができるんじゃないかっていうのを、どっかに根底には置いといてもらいながらっていうのは、まずはベースラインとして大事かなというふうに思います。
やっぱりそれは後になって認められるものもあるとは思うんですけども、やはりこうして今回のね、こういった先生のラボが社会に出すっていうのは、そういうところが意味があるので、ぜひそれはどういうところに、この研究をすることが将来人に役に立つのかとか、地球なのかとか、人類なのか。そういう小さな研究でも大きな、その先につながる望みを持つってことが、やっぱどっかおかないといけないのかなとは思いますけど。
武部: でも、もうそういった意味で宇宙ってテーマとかが出てくると、ある意味で言うと、すごくワクワクしてくるっていうか、やっぱりそういう次の世代でジェネレーションが変わるかもしれないけど、その時代に何を残せるかとか。そういうビジョンでも。
室伏: 宇宙は、なんでしょう…実際に行く人、行かない人はいるけれども。実際に民間のね、旅行ができるみたいな話の時代ですけれども、よく日本の良さを知るには、海外に行くと、気づくみたいなことがあって、アイデンティティみたいな。やっぱり我々、地球のアイデンティティっていうのに気づくのは、宇宙に行くと多分。宇宙飛行士の方が、人生観が変わるみたいに、我々の気持ちを遠くに置いてみて物事を俯瞰してみると、立ち位置が分かるという意味ではあるので。
武部: オーバービューエフェクト(Overview Effect)ですね。
室伏: サイエンスも、おそらくそういうところであるのかなと。
武部: そうですね、ほんと視点がぐっと変わったりすると、やっぱり今考えている小さいことがどれだけ小さいのか。そして、それがどんだけ大きいことにつながる可能性があるのかな、そういうことが想像できる可能性がありますもんね。
室伏: そうそう。ここをつなげるといいんじゃないかとか、違う分野も取り入れる方がいいんじゃないかみたいな。

Stellar Science Labを見学(SS-F Lighthouse Lab内施設)
「ジョイスパン」とこれからの研究者像:幸福・物語・挑戦がつくる次世代の科学
武部: そんな感じしますね。実は先月に、「TIME(タイム)」TIMEっていう雑誌のイベント…
室伏: おめでとうございます。
武部: ありがとうございます。そうですね、自分も一応、その100人というのに選んでいただいたんですけど。もう、そのイベントで出会った老年学者の方っていうのがいて、その彼女が話してた概念って、結構面白いなと思ったので、今紹介するんですけど。
今私たちって、この医学の進歩をしていく過程の中で、寿命?ライフスパン(Life Span)っていうのを、まず最初にこれを伸ばしていこうってことで、この50年間で寿命がぐわっと延びて、今度は高齢化社会に来たと。
そうすると、その寿命って考え方だけではダメで、健康寿命って概念が出てきて。ヘルススパン(Health Span)を高めましょう。つまり、途中で介護が必要になっちゃうとか、途中でやりたいことができなくなっちゃうっていうことをもうちょっと価値化しましょうっていうので、ヘルススパンが出てきましたと。
それをこの10年ぐらい、多分いろんな方たちが一生懸命やって、今もなお大事な概念なんだけれども、出会った彼女が「次の時代はジョイスパン(Joy Span)です」って言ったんです。
で、その本がアメリカではもう大ヒットしたらしくて、いろんな方たちに「あっ、それなかった」っていうのを、すごくいいポイントで。
ジョイアス(Joyous)の喜びの、どれだけ幸せに暮らせるかって、期間を長くする。
これを目標に、いろんなヘルスケア産業、医療産業が、もうちょっと考え方を向けていかなきゃいけないです。
実は、僕がずっとハピネスの研究をやってるのも、すごく近いなと思って。自分がやりたいことをやれているのかとか、小さなことで喜びを持てているのかとか、そういうこと自体が、実は大事な時代に入ってきているとすると、やっぱり、従来のヒューマンサイエンスの見方だけではなくて、もっと人の喜びとか、ハピネス領域に入っていくっていうことが、ある意味で言うと、のろしが上がったのかなと思って。
このヘルススパンだけじゃなく、ジョイスパンも。最終的にライフスパンを伸ばしましょうって、そういう目線で、研究がこの拠点でもできたらいいなぁ、なんてちょっと思ってるんですけどね。
室伏: スポーツって、そういう要素が結構あると思うんです。もちろん、体を動かしてハッピーだっていう、そういう側面もありますけれど。スポーツって、全部困難な中でしかやらないですよね。
クライミング…絶壁、危ないところです。危ないことしかしない。
パラリンピアンもそうですよね、目が見えない方で走らせると、泳がすとか、ちょっと前だったら言えないんじゃないかみたいにやめなさい、みたいなことありますよね。
この間、ウィンターオリンピックもありましたけれども、氷の上なんてツルツル滑って危ない、わざわざ危ないところで楽しむわけですよね。スキーもそうですよね。
武部: 本当にそうですね。
室伏: マラソン40キロ走るって、そんなん走りたくないですっていう人もいるわけじゃないですか。だけどもそれを楽しくしたりとか、その場をスポーツ化することによって、人生の楽しみに変換していく能力。与えられるっていうよりは、自分で作り出す、プロデュースしていくっていうことは、このセンターもそうだと思うんですけども。そういう発想はすごく大事なことかなと。同じ2時間でも楽しいこと、あっという間に時間過ぎちゃいますけれども、つまんないことは、どんだけ長いんだみたいな話ですよね。
客観的な事実と、感覚的なところは、やはり違うものがあって、捉え方とか。そこはキーです、本当に。事実と真実は違う、みたいなところはやっぱりあるかもしれないですよね。
武部: 最近ね、フィクションにもはまっていらっしゃるという。
室伏: そう、ちょっとはまっちゃって。やりたいです。
武部: 室伏執筆フィクションが世の中に出る日は近いと。
室伏: そうそう。ちょっと主人公を変えなきゃいけなさそうで、もうちょっと子供とかの方がいいらしくて、僕は女性のオフィスワーカーにしちゃったんですよね。
武部: 実在する人をちょっともじりながら。
室伏: やっぱり女性のオフィスワーカーの方で、冷え性で、オフィスで悩まれている方結構多くて、その人をこう…変わっていく姿を描いてたんですけど、ちょっとあんまり(出版社にはささらなかったようで)。
室伏: 別のところだったら、刺さるかもしれない。
武部: そうですね、うちで出版しましょう(笑)。いや、だって飛行機で移動中にフィクションのことを思いついて執筆されて、もう本出そうって思われて。僕も何回か読ませていただいたりとか、僕もちょいちょい登場したりするんです(笑)。
室伏: そうなんですよね、身近な人、登場させて。
武部: めちゃくちゃ面白くて、すごく感動しちゃって、言ってみたらちょっと自分のフィールドじゃないことに普通に挑戦し続けてるって、ねえ。
室伏: いや、別に挑戦しようと思ってるわけじゃないですけど、フィクションの方が分かるんです。本当のことを伝えられても、人間って実感がないんですよね。
フィクションこそ、一番人に刺さって、想像をかき立てるわけですから。
武部: そうですね。
室伏: そのスポーツに関係することを、どうやって自分をマネジメントしていくと強くなっていくのかみたいなのを、フィクションの主人公がメンタル的にもすごく疲れてしまって、どうするんだ?みたいな。自分のお父さんのこともわからなくなるみたいなところまで行ったけど、回復するみたいな。
室伏: 僕は面白いと思ってるんですけどね。
武部: 面白いですよね。
室伏: 出版社の考えもあるんで。しかも(本の中で)選択するっていう。
武部: あれです。ロールプレイングゲームみたいな本なんですよね。昔、ゲームブックっていうのが流行ったんですけど。私も実は作ったことあるんですけど、1個。
リハビリをしに来たうちの付属病院に来た方が、ちょっと散策をしながら、病院内を回っているうちにリハビリを終えられるって、そういう散策本を館内のクリエイターと一緒に作ったことがあって。それに近い。
室伏: 女性のオフィスワーカーの方が、友達に誘われて運動して、ジムに行くみたいな話になって。友達と行ったら、友達はすごいやる子なので、一緒に付き合った次の日はもうガタガタになって動けなくなってしまって。で、あなたならどっちに行く?みたいな選択をしていくですけど。
武部: いや、もう多分、ちょっとこの辺何人か(スタッフが)いますけど、みんなちょっと衝撃を受けていると思います。スポーツの人じゃないの?みたいな(笑)。
室伏: そうそうそう。
武部: いや、でもこれですよね。この飛んでいく感覚っていうのが次々出てくる。しかも、それをちゃんと各々、時間はかかるかもしれないけど、具現化させますもんね。
室伏: そうですね。

次の世代へのメッセージ
武部: それは超重要ですよね。
ちなみに、これから若手に向けてとか、これからの人たちに向けて、メッセージというか、コメントがあったりしますか。
室伏: 世の中が相当こう混迷している中に…なんていうんですかね。
だからこそ本当の真実や自分が本当にやりたいことを追求していかなければ、時間ももったいないですし、世の中にインパクトを与えていけないと思うので、ぜひ自信を持って、自分に。やっぱりスポーツじゃないですけど、可能性を持って。わずかの可能性でも。最初は5%だったのが、ちょっと工夫すると10%ぐらいの可能性になるよとか。
最初から100%用意されたものをやるみたいな、そういうつまらないことをやめてもらって。もうわずかでも、引き伸ばして引き寄せられるようなそんな若手の方が、研究者もアスリートもそうですけど、育っていってもらいたいです。
武部: 本当ですね。
多分それをやること自体が本当に長い目で見ると、やっぱり自分の幸せに帰ってくると思うんですよね。やっぱりこう諦めないで、本当、わずかな可能性に、挑戦というと大げさかもしれないですけれども、取り組んでみて自分の興味をちゃんと伸ばしていく。それ自体のプロセスが、最終的にはハピネスにつながるから、僕はサイエンスの考え方がいろんな人にこう進展して浸透していくってこと自体が、実は結構大きい世界のムーブメントになるのかな、と。
室伏: あと、やっぱり武部先生は素晴らしい先生ですけども、おそらく何らかの…ご両親なのか、先生なのか、影響を与えられる人は絶対いますよね。もともとのポテンシャルに磨きがかかる、そういういい方と巡り合うことがすごく大事なんですけどね。
武部: そうですね。
室伏: そういう影響を受けた方はたくさんいると思いますけど。
武部: 要所要所で本当にいっぱいいますけど、やっぱり祖父は大きいかなと思います。
両親も本当にいっぱい影響を与えてくれたと思うんですけど、やっぱり父方、母方両方とも祖父が結構挑戦者というタイプだったんです。
うちの父母は割と手堅く、人生を安定に暮らすっていうことを大事にしていた両親だったんですけど、その理由は祖父が割と破天荒だからっていう理由で。その2世代ジェネレーションを見たので、母方の祖父は、創業系で車を売ってて、父方の祖父は神風特攻隊だったんですけど、死なずに終戦を終えて、アメリカで貿易やってたっていう人だったんです。
室伏: アメリカで。
武部: はい。あの2人から…例えばアメリカに暮らしてたおじいちゃんは、アメリカ大嫌いだったけど、英語の辞書を持って渡米して、アメリカでやるんだって決めて、ずっとそこからマンハッタンに暮らして。いろいろもう右往左往というか、上下変動もすごかったらしいですけど、最終的にずっとアメリカで暮らしたじいちゃんです。2回ぐらいしか会ったことないんですけど、そういうところのスピリッツは、もしかしたら何か影響を与えていたのかもしれないです。
室伏: そうですね。
武部: 室伏さんも、近い方で…
室伏: うちの親父が、2代で鉄人やってましたね。
だけど、うーん…やっぱりこう、それこそサイエンスみたいな考え方は、父?分析することとかそういう、昔の人ですけども、すごく大事にしてやってました、苦労した分。
武部: そうですよね。
室伏: だからそういう上にあるんで、父のような、そういったファウンデーションを作る人って大変ですよね。
武部: 最近だと、ネアンデルタールの?
室伏: そうです。
武部: 私も研究してるネアンデルタールの本。
室伏: ネアンデルタールに、親父はすごく興味を持って、そういう本を出して。
武部: いや、すごいですよね。
室伏: そういう話ばっかりしてるんですよ。
武部: ええ、それは本当すごい。
室伏: 「刺激と適応なんだ、人間は」とか言ってましたけど。「刺激を与えなければ」みたいな。
武部: インスピレーション、バリバリ来そうですね。
室伏: そういう話、ずっと小さい頃からいろんな、うん。
武部: もしかすると、我々もその次の世代ってことを考えると、ある意味こう…メンターっていうとちょっと大げさなんですけど、刺激を1個でも与えられるような存在になれたらいいのかもしれないですね。
室伏: そうですね。やっぱりスケールの大きいところでものを考えられないとダメですかね。
武部: 本当にそうだと思います。
室伏: 今日はありがとうございます。ますますね、もうスタートしたばかりですけれども。
武部: そうですね。
室伏: ぜひ横浜から日本を、そして世界を元気にしていただけるようなラボになっていけば。
武部: はい、ぜひまた遊びに来ていただいて、一緒に研究できたらと思います。ということで、今日のゲストは室伏広治さんでした。今日はありがとうございました。

YSAスポーツと医学のジムにて
Stellar Lab Radio.まだ、誰も知らない世界を変える研究について
ホストはステラサイエンスファウンデーションの武部貴則でした。
See you soon,on stellar lab radio.
Stellar Lab Radio、まだ誰も知らない世界を変える研究について。