一般社団法人ステラ・サイエンス・ファウンデーション(STELLAR SCIENCE FOUNDATION、所在地:東京都中央区、代表理事:武部貴則、以下SS-F)はこの度、世界レベルの研究実績を誇る研究室において、国内外からの卓越した研究員を誘致するための資金援助を行うSS-Fインベンター・ブリッジ・プログラム(以下、当プログラム)を開始いたしました。
当プログラムの第一号として、東京大学の西増研究室(研究室長 西増弘志教授)を選出し、インドのゲノム研究における代表的な研究機関であるCSIRゲノム学・統合生物学研究所(CSIR-IGIB)より、サンダラム・アチャリヤ氏が研究員として招へいされました。西増研究室は、構造生命科学領域において、世界的にも卓越した研究を行なっており、当プログラムによる支援でアチャリヤ氏を招へいすることにより、更なる研究の飛躍を目指します。
【SS-Fインベンター・ブリッジ・プログラムについて】
日本の多くの研究室では、優れた研究人材の獲得に課題を抱えています。その一因として、研究員を採用するための費用を調達することに高いハードルがあることが挙げられます。特に、海外から人材を誘致する際、人材を特定した後に、フェローシップや研究費などの予算申請の手続きに少なく見積もっても1年以上かかることが一般的であり、競争性の高い研究分野においては、このタイムラグが画期的な成果創出を遅らせる原因のひとつにもなっています。
この課題に対処するため、当プログラムでは、フェローシップ等への申請が採択されるまでに生じてしまう空白期間に、いち早く研究員を採用するための資金を研究室に援助し、迅速かつ円滑に独創的な研究を進めるための環境づくりをサポートいたします。
【今後の展望】
今後は、採用に関する資金援助にとどまらず、国内トップレベルの研究室と、国内外の優れた研究人材のマッチングを促す活動にも力を入れることで、全方位的に研究のスピードと質を上げていく活動を行なってまいります。
【西増研究室の選出理由】
西増弘志教授は、DNAを切断する「ハサミ」役となる酵素がはたらく仕組みを世界で初めて解明し、ゲノム編集技術の高度化に向けた基盤構築に多大な貢献を果たした実績があります。この輝かしい実績の背景にあるのは、西増教授の持つ性別・国籍・領域を問わず多様な研究者と交わる力であり、まさにSS-Fが掲げるPeople-Centric Science(人々中心の科学研究エコシステム)の考えと合致しています。西増研究室は現在、ゲノム編集技術の高度化を目指し、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)を改変した新規ツールの開発を推進中ですが、この領域は日々凄まじい勢いで進化しています。SS-Fでは、必要な人材を迅速に投入するための援助を通して、西増研究室の研究スピードを加速させ、更なる発見・発明に繋げていただくことを期待しています。
【西増研究室西増弘志教授コメント】
私が現在研究している構造生命科学の領域は、世界でも多くの優秀な研究者たちが挑戦しており、研究スピードが目覚ましい分野です。そこで、自身の研究活動を加速させるべく、以前私が東京大学濡木研究室に在籍していた頃、共に研究をしていたインド出身のアチャリヤ氏に研究室に来てもらいたいと考えていました。一般的に、採用に関わる資金獲得が困難な状況にある中で、SS-Fよりこのような形で支援していただけることとなり、大変感謝しております。アチャリヤ氏は、西増研究室とは異なる専門性をもって、革新的なゲノム編集ツールセットの開発をされていました。また、技術的な専門知識に加えて、ハイリスク・ハイリターンの研究に挑戦するチャレンジ精神、及び、国や文化を越えたコミュニケーション能力の高さも兼ねそろえており、一緒に研究するのを非常に楽しみにしています。
【サンダラム・アチャリヤ氏コメント】
この度は、SS-Fインベンター・ブリッジ・プログラムに採択いただき、大変光栄に思います。この貴重な機会により、私は東京大学先端科学技術研究センター(RCAST)の西増弘志教授のもとで、ポスドク(任期付き博士研究員)としてのキャリアをスタートすることができました。このプログラムに採択されたことで、基礎科学研究における新しいシステムの発見と、実社会への応用にもつながる独創的な技術開発の両輪から、ゲノム工学の最先端を切り拓くことができます。これから、SS-Fの素晴らしいコミュニティメンバーと協力し、インパクトのある研究活動を共に育んでいけるよう精進してまいります。
■ステラ・サイエンス・ファウンデーション(STELLAR SCIENCE FOUNDATION略称:SS-F)について
SS-Fは、サイエンスを担う人々の力に注目し、破壊的な発見・発明の持続的創出を促す仕組みの構築を目指す日本発の団体です。日本の科学研究の復興を、科学者の自由な研究活動を支援し、世界を変える発見・発明を生み出すことで実現し、社会に貢献したいと考えています。
SS-Fは、「The Stellar Model」と呼ばれる3つのコアコンセプト(Stellar Inventors – 傑出した次世代研究者の発掘、Investment – 自由な挑戦を可能とする研究環境構築支援、Inclusive community – 多様性溢れるコミュニティの醸成)を軸に、傑出した研究者による好奇心主導の研究を実現可能にすることを目指します。