Stellar Lab Radio 第5回 ゲスト:董冕雄さん、太田香さん
今回のStellar Lab Radioでは、災害時でもつながり続ける通信インフラの実現を目指し、「天地人」という独自のネットワーク思想のもと、情報通信・無線技術・医工連携を横断する研究に取り組む、室蘭工業大学の董冕雄さん、太田香さんをお迎えしました。
前編では、東日本大震災での原体験をきっかけに「人と人がつながること」の本質に向き合った研究の出発点から、ドローンや衛星を活用した災害時通信ネットワークの構想、さらには脳波(EEG)を用いたインターフェースや夢の再現といった最先端の研究まで、多岐にわたる取り組みを伺いました。
また、個人の好奇心と社会実装を両立させる研究スタイルや、複数の研究室が連携しながら発展していく“グループ型”の研究運営など、お二人の研究を支える思想や組織のあり方にも迫ります。
後編では、お二人がどのようにして研究者の道を志し、分野を越えながら現在の研究スタイルに至ったのか、その原点に迫ります。
研究の背景にある個人的な体験や価値観、そして未来に向けたビジョンまで、ぜひ後編もお楽しみください。
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「天地人」の原点、3.11での体験ー南三陸町に住む母の安否を知れたのは…。
北:今日のゲストは董さんと太田さんです。今日はどうぞよろしくお願いします。
董さん(以下、董):こんにちは。
太田さん(以下、太田):よろしくお願いします。
北:まず、結構今雪が降ってるじゃないですか。なんですけど、室蘭から来ていただいたということで、本当にまずありがとうございました。どうですか、東京と全然違いますか?
董:そうですね。東京の方があったかいのは
北:なんか(飛行機が空港で)ストップしてたという(お話を)、太田先生が。
太田:そうですね、ちょうどあのニュースになった日に新千歳に降り立ったので、ものすごい人混みで驚きましたけど。
北:そうですよね。昨日ぐらいに雪降るって言ってたんで、日本というか東京でも。なので私も自転車なんでどうしようかなと思ってたんですけど意外と降らなくて(笑)。
ということで、早速、まず前半は2人の研究領域についてお話を伺いたいなというふうに思ってます。お二人は、情報ネットワークですとか、IoT、防災通信などを専門にされていると思うんですけど、リスナーの方にイメージしやすいように、現在取り組まれてる研究について教えていただけたらと思っています。まずどうしようかな、董先生からお願いします。
董:はい。主に2つのトピックあるんですけど、1つは防災についてなんですが、防災を今やり始めたきっかけっていうのは、私、3.11の2011年の時に、カナダに留学してたんですよね。で、3.11地震が起きて、その時にちょうどカナダでは夜中だったんですが、起きたら、テレビつけたら日本で大変なことになっているということで、
北:そうか、時差があるんで
董:そうですね。
北:そうですね。私たちは昼ですね。
董:向こうが夜中じゃないですか。起きたらニュースで地震があったというのを知ってですね、それで真っ先にそのうちの親、宮城県に住んでたんですけど、津波が大変だったということで、
北:そうですよね。
董:すぐに連絡取ろうと思ってたんですけど、全然連絡取れなかったんですよね。で、一方テレビではいろんなニュースが、核がどうのこうのとか、津波が来て町が全滅、ちなみに南三陸町に住んでたんですけど、あそこはほとんどもう水没というか、津波で壊されていて、結構心配してたんですけど、なかなか連絡が取れなかったんですよ。日本にいる両親と。結果的に連絡取れたのは、確か3日後とか、4日後だったんですよね。それが1つの研究のきっかけというか。
私は日本に戻って卒業して大学、最初NICTという情報通信研究機構に就職して、1年後に国立大学に就職したんですが、それを自分がカナダで体験した時の想いというのは、一番こう災害が起きたときに取りたい人々と連絡を取りたい、安否確認したいということが、ずっとこう残っててですね、それを大学に戻ってっていうか、就職して、それでこの分野を研究しようというのがきっかけなんですよね。
つまり我々が、最初にドクター時代にやってた、この通信というか、ネットワークの分野の研究を災害時にどういうふうに応用していくか。災害だったらいろんな研究分野のいろんな研究のアプローチがあると思うんですけど、土木でも、情報でも、もちろん医療ですね、いろんなアプローチがあるんですけど、我々の中でどういうふうに貢献していくか。逆に身近な体験でどういうふうに生かせていくかというのは、最初の研究のきっかけなんですけど。
北:実際、私は日本にいたので結構すぐ連絡、いろいろ連絡がついたんですけど、どのくらい時間がかかったんですか?
董:だいたいですね、安否確認ができたのは本当に3日とか4日後ぐらいでしたね。
北:全くその間は何も?
董:何も。正確に言うと電話で話せたのは3日後、3日か4日後なんですけど、その間もいろんな方法を使って、安否確認はしようというふうには試みたんですよね。それについては、当時ですけどインフラで電話は全部使えなかったんですけど、特に国際電話ですね。
北:へぇ。そうなんですか。
董:カナダから国際電話じゃないですか。
北:はいはいはいはい。
董:もちろん家にかける家電?いわゆる家電の場合もそうですし、携帯電話ももちろん通じないし。で、インターネットではですね、インフラとしてのインターネットは、わりと復旧は早かったというふうに言われてて、そうすると私たちもこのインターネットで、当時Twitterっていうのはまだ出始めた
北:Twitter?
董:Twitter出始めたころなんですけど、私も初めて、今でもそのアカウントを使っているんですが、初めてTwitterにレジストレーションしてですね、
北:おー。
董:そのTwitterのレジストレーション時間ってあるんじゃないですか?何年前とかっていうの。で、それを今見ると、まさにその3.11の時で初めて登録してですね、それでこう人を探し、安否確認をTwitterを通じて拡散、いわゆる今で言うと拡散していくっていう方法をとってたわけです。
その中でちょうどカメラマンがいてですね、うちの親がリゾートホテルに勤めてたんですが、リゾートホテルに勤めていて、そのカメラマンがいたんですが、そのカメラマンがこの被災地の写真を撮ってですね、インターネット上にアップロードしてたんです。しかも、そのインターネット上にアップロードしたのは、その被災地ではなくてですね、被災地は当時インフラはダウンしてたので全然できなかったんですけど、電気もないし、もちろんネットもないし。で、彼はですね、その南三陸町で、ちょうどその被災地の情報をとってて、歩いて大体90キロ先の仙台に歩いて戻ったんですよね。歩いて。その仙台だと復旧が早かったので、そこで被災地の写真をあげ始めたんです。南三陸町の被災地の写真をあげ始めて。
そうすると、私たちはTwitterとかいろんなツールを使ってですね、その被災地の写真から自分の私の母親なんですけど、その写真を確認できて、それで安否確認ができたわけですね。通話ができたのは実際もっと後なんですよね。正確にはちょっと今もう忘れたんですけど、いつ通話できたのか、インフラが復旧したのはだいぶ後で。
北:その写真から見つけられたってことですか?
董:そうです。
北:え?
董:そうです。そういうことですね。
北:すごい。え?
董:奇跡ですよね。
北:奇跡ですね、それは。
董:はい。まさに今、私Facebookやってるんですけど、当時自分の母親と住んでた場所が、要は南三陸町っていうのは津波が一番被害がひどかったところなので、流されたとか、そういうのが一番心配していたわけですよね。実際の状況、様子がわからないということで。それをこの被災地の写真って、写真を記録した時間と場所ってわかるんじゃないですか?だからその津波が来た後にちゃんとその写真が撮られてて、かつ両親と自分の家がその写真に写っているということは、ある意味安否確認ができたということなので、
北:すごい、なるほど。
董:それが1つのきっかけなんですよね。で、それを研究の要素に持っていくと、このカメラマンの話あるんじゃないですか?カメラマンっていうのは、彼はですね、この写真を撮ってその場でこのデータをアップロードできなかったわけですから、彼は歩いて仙台までアップロードし始めたわけですね。これがまさに私たちが開発してきた「天地人」というシステムがあるんですけど、耐災害システムですね。
北:企業と連携されているやつ?はいはい。
董:そうですね。要は、その災害が来た時に、いかに早く安価で通信ができるようなネットワークを作ろうっていうのは、この私の体験からだったんですけど、天地人というのは、この天のネットワーク、地のネットワーク、人のネットワーク。人のネットワークはどういうことかというと、まさにそのカメラマンが、彼がデータを持って歩いて仙台へ行くということはヒューマンによってそのデータが運ばれた。まさにその例じゃないですか。そこから我々の研究がインスピレーションされて、天地人の人の部分がそのカメラマンの実際の行動からだったんですよね、アイディアというのは。それで天地人って名付けたんですよ。
北:歩いて90キロって言ってたので、例えば、その上げたところがGPSとか通じてて、そういうところからその写真が、そこの宮城の写真がアップされたと勘違いしたとかいうシナリオ、内容なのかなと思ってたんですけど、そうじゃないお話でしたね。
なるほど。そこから震災というか、災害時の通信の関連の研究をされてるっておっしゃってましたけど、今は引き続きそれを中心にやっているのか、あるいは他の分野とかにすごく興味があったりとかってするんですか?
空からつなぐ通信網―ドローンと衛星が拓く災害時ネットワーク
董:そうですね。通信の分野、天地人というのはいくつかの要素があるんですけど、通信の分野がメインに根幹としてあって、それが太田先生が今JSTのいろんな事業から支援を受けて、通信の分野をさらに発展させている感じなので、太田先生なんかありますか?
太田:はい。董先生はストーリーベースで天地人の研究につながったというお話があったんですけれども、カナダ留学で私たちの研究の方向も少し変わったっていうか、今につながったのがあって。
私はもともと情報、ネットワークって言って、コンピューターサイエンスの分野の情報、ネットワークの部分を専門にしてたんですよね。っていうのは、インターネットってこう網目状になっていて、こう端末からデータを送信して相手に届けるときにいろんなこうルートがあるんですけれども、そのルートをどういうふうに通るかとか、そういう研究だったんですけれども、カナダのホストの先生は、無線通信の権威の先生だったので、通信の方の研究を進めるようになったんですね。通信っていうのは、どっちかというと、このルートの方じゃなくて、端末からアクセスポイントまでのこの二点間の電波の有効利用とか、それが通信の研究なので若干違うんですよね。で、その無線通信の研究に話が研究の軸を少しずらして、今私わりと無線通信の話をしてるんですけれども。
ちょっと話を戻すと、天地人の中で、その発想が出た当時は、あまり衛星通信とかがなかったので、ドローンを飛ばして、そのドローン、アクセスポイントでネットワークを構築しようっていうのが1つのアイディアだったんですね。でも今はご存知の通り、スターリンクとか出てきて、衛星通信が家庭でも簡単に使えるようになったので、全地球上でエリアがカバーされたっていう状況ではあります。去年の能登半島地震の時も、やっぱりネットワークが、地上のネットワークがダウンして、スターリンクがこう災害地用に設置されて使われたっていうのがあるんですけども、まだ実は衛星通信デメリットがあって。
というのはやっぱりこの開けたところじゃないと使えないとか、あとは直接通信がまだちょっとデータを送れる容量とか限られているのでできないっていうことで、やっぱり災害で緊急でネットワークを構築するのには、そういった私たちが提案している天地人のドローンで、やっぱりエリアをカバーするっていうのは有効かなと思って、引き続きそれは研究しているところですね。
北:なんかそのドローンっていうと、やっぱり機械ですし、携帯電話でもそうですけど、バッテリーというか、その持つ時間数みたいなのとかにリミテーションはないんですか?
太田:あります。かなり制限があって、私たちが普段使っているドローンは、通常使うときは2、30分の飛行が可能なんですけど、一回実験したときにものすごい寒いときで、1℃ぐらい、外気温が1℃ぐらいの冬場使ったら、まず起動までにすごく時間がかかって、なかなかドローンが動かない。
北:あー、なるほど。
太田:動いても10分ぐらいしか飛ばないっていうのがあって、やっぱりバッテリー駆動のドローンの制約っていうのもあるなっていうのをすごく感じました。
北:なんで寒い方がバッテリー早くなくなるのかなと思って。スキーとか行ったときに携帯すぐバッテリーなくなる、あれと同じでですか?
太田:はい、同じですね。リチウム電池の話だと思うんで。
北:そっか、そっか。そうするとそれに代わるものって何か考えなきゃいけなかったりするんですか?
太田:そうですね。なので、1つはそのドローンのエネルギーを食うのは、一番食うのは、やっぱりこの起動の部分が一番バッテリー消費が激しいので、なるべく無駄な動きをしないように、ルートっていうか、UAVの量程っていうんですかね?を最適化するように、自動で計画する、ルートプランニングみたいなのをするっていうのは、1つ研究としてやってます。
北:今その天地人の話とかで、多分私はどちらかというと董先生がやられているものだと思って認識してたんですけど、結構連携されているというか。お2人で、1つの研究室というか、グループというか、というので研究を運営されているという認識なんですけど、最初から一緒に取り組んでいたのか、それとも違ったものが違った領域をやりながら、だんだんかぶってきて、無線なら無線の研究が取り入れられてきたのかとか、どういった形で連携されているんですか?
董:そうですね。もともと大学時代に戻るんですけど、私は会津大学で学部、修士、ドクターまで取って、太田先生のほうは学部は会津大で、マスターはアメリカに留学してドクターでまた戻ってきたんですけど、研究室はですね、かぶってた時期もあるんですよね。まず学部の時は一緒でした。マスターの時は別々だったんですけど。で、ドクターの時に学部の時の研究室に戻ってきたんですよね。ある意味研究テーマ自体は、学部時代から卒論という意味でね、似てるテーマを取り組んでたんですけど。
今の大学に、職場ですね、室蘭工業大学に来て、研究室は独立して、2つの研究室があったんですけど、連携できる部分は連携して。特に天地人みたいな大きなシステムというのは、一見して通信とか情報ネットワークというくくりはあるんですけれども、その中でやっぱり何個か研究テーマというのはやっぱりないと成立しないわけですね。それをそれぞれの知見で得意不得意というのはあるので、それを取り組んで来ました。その後、私はちょっと医工連携に興味がシフトしていって、太田先生は引き続き、通信とかネットワークの方を推進していってるような感じですね、今は。
北:医工連携に興味がシフトしていったというのは、震災とか災害時の研究というのが発展して、やっぱりその医療のためですとか、災害時の医療のためとか、そういったところに発展していった感じですか?
董:そうですね。これはパーソナリティーの話かもしれませんけど、私個人にとって研究ってまず面白くないといけないかなと思っていて、面白くないといけない+実用的じゃないといけないかなと思ってるんですよね。もちろん、いろんな基礎研究とか分野はあるんですけど、自分が所属しているコンピューターサイエンス、コンピューター科学という分野は、周りの携帯電話とか、AIとか、そういうネットワークインフラっていうのは、どっちかというと、割と実用系が多くてですね、理論研究はそこまで割合ではないという認識しているので、そういう大前提の中でやっぱり自分の研究はどういうふうに実用していくかっていうのは出発点にあるわけですね。
北:はい。
脳波で物を動かす?夢を再現することは可能!?
董:で、天地人の話は、被災体験からじゃないですか。安否確認できなかったということで、こういうシステムがあるといいかなと。で、医工連携の話っていうか、その研究はですね、やっぱり超高齢化社会というのも、日本でも中国でも世界中でこれからおそらく直面することですし、自分もこう年取ってきているわけだから、そういう意味ではね、研究分野に自分の知見をともにマルチでできるというか、うまくかみ合わせるというか、うまく趣味と研究を抱き合わせることができるといいかなと。それが大学の醍醐味でもあって、教授職のいい部分でもあるかなと思ってるんですよね。そういう意味では、最近はものすごく、この医工連携の部分に興味があるんですよね。
北:大学の面白さというか、良さみたいなことをおっしゃってましたけど、そこで気になるのが、そのコンピューターサイエンスって、結構その企業でも研究活動をされてたりとかする中で、やっぱりその企業で研究するのとの違いと、その大学でやることのやっぱり面白さ、やっぱりここでやっていきたい、室蘭工業大学でやっていきたいと思う点というか、タイミングっていうのはありますか?
董:そうですね。大学でできる、大学でやる研究と企業でやる研究は、私の認識はですね、大学でやる研究は本当に発想ベースというか、要はすぐにでも利益に結びつかなくてもいいような研究をやってもかまわないというのは大学の研究だと思うんですけど、企業ですとある意味見えている部分が必要じゃないかなと思っていて、100%そうじゃないかもしれませんけれども、大多数はそうかなと思ってて。そうすると大学だと、ああ、今これをやってみたいというのは、すぐできるわけですね。本当に興味というか、研究の興味本位でできるので、そこは違うところかなと。
北:なるほどなるほど。実装化っていうと、結構ライフサイエンスの研究者って、その言葉を使うと応用研究ですとか、創薬みたいなイメージを持たれる方もいるのかなと思ったんですけど、やっぱりその実装化を見据えている大学研究でも、やっぱり企業でやるのとはまた違って、よりバックキャストするというよりかは発想起点とか、やっぱり興味起点っていうのができるっていうのがいいところなのかなというふうに改めて思いました。なるほど。医工って具体的にどんなことをやっていらっしゃるんですか?
董:そうですね、様々なテーマがあるんですけど、1つは札幌医科大学との連携で、ここは太田先生が中心に役割をしているんですけど、泌尿器科の診断に私たちが開発するAIのアルゴリズムで、その診断の一助をするというようなアプリケーションと、今はドクターの学生、何名か投入してですね、3つのテーマがあるんですけど、1つは医療のデジタルツインですね。
北:ああ、なるほど。はい、はい、はい。
董:つまりそのデジタルツインを使って、個々の患者さんでもパーソナルの人にいろんなデータをシミュレーションして、どういう結果が出るかというのを、健康上のデータでもいいんですけど、それをデジタルツインでやってみると。もう1つはEEGデータ、脳から取るEEGデータがあるんですけど、それをEEGデータを使って物を動かしたりとか、そのEEGデータを解析してですね、例えばの話、
北:え?どういうことですか?物を動かすってどういうことですか?
董:要は、例えば今パソコンありますよね。
北:はいはいはい。
董:パソコンでマウス操作とかってあるんですよね。
それで、マウスを操作できないかというような動かし方、だからポインターですよね。このマウスの。それを動かしたりとか、EEGデータでね。
北:どういうことですか?何か(頭とかに)つけてるんですか?
董:あっ、そうですね。
北:そうですよね?!
董:その装置をつけて、
北:ああ、なるほど。(頭に装置を)つけて、それでそのデータを
董:解析して
北:でもその時って頭で何か考えるのか、何をすると発信できるんですか?
董:そのEEGデータをキャプチャーする装置はあるので、それをキャプチャーして、こういう例えば、そのマウスを右に動かしたいとかっていうのはできるんですよね。
北:へぇ、知らなかった。
董:1つの例なんですけど、もう1つは、このEEGデータを寝ている間に、これも学生が今やってるんですけど、寝てる間に例えばずっととります、8時間とります。人間って夢を見ますよね。
北:はい、はい。
董:で、私も夢見るんですけど、夢によっては昨日の夜に何か夢を見てですね、だけど起きたらもう忘れてる時ってあるんですよ。あれ、何だったっけ?っていうのはあって。で、その学生がやろうとしているのは、例えば8時間ですね。この寝ている間にそのデータを取ってですね、で、夢見る間にもちろん記録されてて、それを、その見た夢を復元できないかっていうのを今研究してるんです。つまり、この脳波を、例えば、夢の中でコーヒーを飲んだっていうふうに記録、EEGデータ、脳波が記録されて、起きたときにそれが消えたというか忘れたとします。その部分を切り取って、昨日の夜コーヒー飲んでるのを再現しようというのが研究の内容なんですよね。
北:へぇ。
董:つまり、夢の中身をもう一回再現してみようというのは、その学生が今やってるとこです。
北:めっちゃ面白いですね。
董:私も聞いてて、ああ、面白いなと思いました。
北:なんか夢って、結構普通じゃ考えられないような面白い展開とか、場面がすごい変わったりとかするじゃないですか?普通にクリエイティブなストーリーにも使えるかもしれないし、あるいはすごくいい思い出な夢もありますよね。思い出したいけど、思い出せない。
董:はいはい。その研究は面白いなと正直思いますね。
北:睡眠の研究者とコラボできそうですね。そんなことないんですかね?
董:そうですよね、そうですね。今の段階ではそのデータ解析に、まだスタートの段階なんですけど、もちろんその睡眠の専門家でも知り合いはいますよね。
北:はいはい。(その方が、このPodcastを)聴いているといいですね(笑)。
董:それで何かコラボできたら面白いなと思いました。
北:めちゃめちゃ面白い。そういうふうに発想している研究員の方も面白いですし、
董:そうですね。
北:それもやらせてみるっていうのは、やっぱりその面白いというふうに思ってやられて、
董:そうですね。研究っていうのは、基本的に面白い発想とか奇抜な発想からできてて、それを実証していく、1つ1つ見ていくっていうのは研究の一番楽しい部分だと思うんですよね。それはまさに、うちの研究室というか、それを実践をしてて、いろんな学生も結構多いし、いろんな学生がいろんな発想、いろんなテーマがある中で、「まあ、とりあえずやってみましょう」っていうのはっていうのはあります。それで出てきた面白いアイディアが、「あっ、これはもうちょっと伸ばしましょう」とか、「これはこういうふうな方向に持っていったらいいんじゃないか」っていうのは実践しています。
北:うんうん、なるほど。
太田:結構EEGのデータを使うっていうのは最近すごく注目されているんですけど、すごい難しくて、というのは、埋め込み型のやつもあるらしいんですよね。脳に直接埋め込んでデータをとるっていう研究も、結構アメリカとかはあるらしいんですけど。でもそれって怖いじゃないですか、脳に埋め込むのは。
北:怖い、怖いです。なんか溶けてこう、なくなっちゃいそう(笑)
太田:っていうのがやっぱり怖いので、そういう非侵襲的なただのヘッドセットでEEGデータをとるデバイスを使ってうちでは研究するんですけど、割とやっぱりデータノイズが結構あるので、そのデータ処理をするのは割と難しい。
北:それって中に埋め込めたほうが、ノイズはやっぱり少なく?
太田:そうですね。
北:へぇ。
太田:もちろん。
北:さっきそのマウスを移動できたりするって言ったじゃないですか。やっぱりこう動けないけど指示出したい時って、日常的にすごいあるなと思って。私だと、直近だと、数年前に子どもを寝かしつけてる時とかに、隣の部屋でうるさくて、「静かにしてくれ」って言いたいときとか、信号を送りたいとか。ドアを開け、こう頭で考えたことでドアがこうピューとか動いたら、めちゃくちゃいいなとか思うんですけど(笑)、それはできるんですかね。
董:そうですね。その装置にメカニックな部分をつければできる。まぁ今音声でも「アレクサ、これ音楽を止めて」とか、
北:確かに。でもアレクサって言わなきゃいけないから起きちゃう(笑)
董:「アレクサ、エアコン下げて」とかっていうのは、もう多分おそらくできると思うんですけど、それを次のステップとして、EEGデータを取って、ドアでも、エアコンでも、電気でも、メカニックな部分と関連すれば多分できるんじゃないかなと。
グループで育てる研究室、サイロを作らない研究室のかたち
北:すごい。そういうところで、ちょっと分野も変わってくると思うんですけど、そういうところをさらに研究されたりとか、今の研究に連続させて広げていきたい、掛け算をしていきたいみたいなのって、アイディアとしてありますか?
董:そうですね。基本的にコンピューターサイエンスの分野って、ものすごく進歩って早いんですよ。今出てきているものって、おそらく2、3年前はなかったというのはいっぱいあるじゃないですか。スマートフォンでもそうですし、あのVRとかいろんなAIだってそうなんですけど、この分野の特徴っていうのは、研究分野の特徴というのは、おそらく常に
アップデートをされて、常に新しいものに取り組む姿勢がないといけない分野かなと思ってるんですよね。そうすると、私たちも、やっぱりその分野の特徴というか、特性がこれである以上ですね、もちろんその自分たちの好奇心もあるんですが、それと合わせてさらにいろんなところ、医工とか、災害とか、通信とかの分野と合わせてですね、とにかく、とにかく新しいものにチャレンジしていく。興味本位でもいいんですが、チャレンジしていくっていうのは、おそらくこの分野の
北:そうですね。
董:研究者のあれですね。特徴と
北:そうですよね。ステラ・サイエンス・ファンデーション(SS-F)だと、やっぱり異分野と交流することによって、新しい発想をっていうのは、常々ビジョンとしても掲げていますし、できてますけど、その領域によって、そのインパクトがより出せるところと、っていうのもあるんだろうなと思って。コンピューターサイエンスとかまさに、そういうところが生きるんじゃないかなと思って。あんまり領域別に考えたことなかったんですけど、
そういった意味で(お二人にSS-Fのコミュニティに)来ていただけて、何かこう他の研究者の方々と別の分野の方々と今まで話してて、これ違う発想でいいなとか、アップデートする上では、面白い意見をもらえたな、みたいなのって、ちょっといきなりですけど、あったりとかってしますかね。マネージメントのスタイルとかも大きいんですかね?
太田:うん、ちょっと今すぐには思いつかないんですけどね。
董:いいかな。異分野融合というか、他の分野と一緒にコラボするっていうのは、おそらくですが、コンピューターサイエンスの分野って、すごくしやすい分野だと思うんですよね。
北:確かに、しやすいですね。
董:特に今のこのデータを解析して研究を進めるというこのプロセスが、ものすごくこう主流になっているというのがあって、そうするとデータ解析とかアルゴリズムの応用というか、適用というのは、やっぱりどうしてもそのコンピューターサイエンスの部分と、ある意味かぶる部分があるので、そういう意味では、すごく何回かイベントがあった中で、いろんなその研究者の話を聞いてですね、なんとなく一緒にできそうな感じはしています。
北:うんうん。そうですね、異分野融合というのもそうですし、近い研究者の話でいうと、それぞれがPIとして研究をしていらっしゃって、でも、その研究室が一緒というよりかは、(董さんと太田さんは)グループとして数名のPIで一緒に活動されていると思うんですけど。一方で、そのPIが1つの研究室の長としてマネージメントしているところもよく見て。
意外とグループで(マネジメントするというスタイルの研究室)というところは、あんまり存じ上げないんですけど、そういった組織体制をとっている理由ですとか、それに対するメリットみたいなのってあるんですか?それとも、室蘭工業大学に特殊なシステムなのか。
太田:室蘭工業大学は基本的に助教のときからPIになれ、情報の先生の話ですけど、私が助教で着任したときから、PIとして独立した研究室を持てました。で、それのもちろんメリットは、若い時から自分の好きなようにディレクションして、チームを引っ張っていけるっていうのはありますけれども、やはりグループは大きい方が、それぞれの先生の得意なところを融合させたり、あとは弱いところを補ってもらったりっていうのができるので、そういう意味で、自然に3人でやろうぜって言ったわけじゃなくて、自然にこうチームになっていったっていうところがありますね。
北:ある意味研究室ごとにサイロ化されているわけじゃなくて、そのふわっとしたというか、グループになっていることによって、そのトップの方々も気軽にというか、常に連携というか、アップデートしながら研究室を運営できるという体制が整っているような、そんなイメージですかね。
董:そうですね。大学なので学生が入って、学生が卒業していくというのは常に毎年というか、もっと言うと半年ごとにあるプロセス、常にあるんですよね。そういう意味では、グループ自体は本当に新しい知恵が流れて、またみんな成長して卒業していくというのは、
まさに半年ごとに起きていることなので、そういう意味ではこのグループ自体は結構こう自由に拡張したり、時には小さくなったりというのがずっときているわけですね。
北:はいはい。
董:その中でやっぱり1つのものがコアな部分、私いつもコアな部分というか、コア技術、コアのソウルとかビジョンとかっていうのは、どうしてもそのコアの部分が必要で、それさえしっかりしていれば集まったり、時には距離を取って、一緒にまた進むというのは、私たちのグループではそれがまさに、常に起きていることで。とは言いながら、この太田先生は2013年ですね。で私は2014年着任して、最初、当時のは教員1名と学生さんで4人のグループからスタートしてですね、大体今12年経ち、人数は50名前後なんですよね。
北:そのグループの人数がですか?
董:学生、教員、教職員ですね。合わせて大体50名ぐらいの。その発展の歴史という中で、大きくなったり、小さくなったりありますけれども、最終的には右肩上がりの形でというふうに来ているかなと思います。
北:そうすると、企業とかでマンパワーが必要なところは、規模拡大人数大きくなるというのが、1つのマイルストーンみたいなものになってくると思いますけど、実際研究というふうになると、ひたすら拡大していくのがいいのか、コンピューターサイエンスの場合、どのくらいのチームが一番ワークしそうだなみたいなのって感覚値としてあるんですか?
董:今すごくいい質問をいただいて、これ個人的な今の感覚なんですけど、ものすごく大きくなりすぎてもあんまり良くないし、小さくても多分できることって限られているので、大学単位ですね。大学ベースの研究内容だと、例えば、100人とかっていうのは、おそらくこのマネジメント上では大変というか、なのであんまりそこは目指してないかなというふうに思っているんです。といいますのは、やっぱりすべての内容についてミーティングもしたいし、議論もしたいし、進捗もディスカッションしながらやったほうが研究が進むので、それ1つ1つの課題とかにはものすごく時間をかけてるわけですね。それがある一定の数になると、おそらくマネジメントは困難になってくるので、
北:そうですよね。
董:それはあまりうちのグループとしては目指していないところです。だから今のサイズをちょっとこう、もうちょっとまでいけるかな?っていう気はするんですよね。どうですか?
太田:そうですね。あとはもちろん研究の内容によって、中でクラスターっていうか、グループはできていて、それですべてやっぱり教員が全部マネジメントするのは難しいので、ドクターの少しリーダー的な存在の方に、小グループを見てもらうとか、そういうふうにしてマネジメントはしてますね。
北:ご自身を自由にやらせる型か、割とフォローしたいマイクロマネジメントか好きだとか、そういったマネジメントのやり方みたいな特徴ってありますか?そして、お2人で違ったりしますか?
太田:私は割とお任せはしていますね。割と遠くから見ているタイプですね、どっちかっていうと。
北:それの方が今までの経験上は、やっぱりうまく自分にフィットしたというか。
太田:そうですね。でもそれも実はやっぱ小さいグループのときはそれでうまくいってたのが、ちょっと大きくなるとそれだとまずいなっていうのは出てきたので、少しグループが大きくなってからは割ともうちょっと介入するようにはしてます。でも私は、どちらかというと、静観しているほうが本当は好きなんですけども。
北:どこら辺に難しさを感じましたか?大きくなってくると。
太田:大きくなってくるとやっぱり人が増えるので、いろんな方が増える、バラエティーが増えるのと、あとは人と人との間の関係もやっぱり自ずと増えるじゃないですか。
北:人間関係的な
太田:人間関係的な。なので、それはもう人間社会なのでしょうがないのかなと思います。
北:そうですね、なるほど。董先生はどうですか?
董:そうですね。私も基本的にその自由な発想に基づいて研究を進めなきゃいけないというのは大前提で。そのグループのサイズはやっぱりなんかやるには、一定のサイズは絶対必要かなと思ってて。じゃあどの部分、どのサイズからのやり方っていうか、マネジメントに変化があるかというと、感覚だと線引きは20人ぐらいかなと思っていて、自分の感覚ですね。
北:はい。
董:例えば、子どもの話をします。子ども1人いる場合と、2人いる場合と、3人いる場合って、私は本質的に違うかな?と思っていて、なぜかというと、一例ですね。子どもを連れて旅行するときに、1名だったらベッド追加して簡易のベッドを追加してできるわけですね。で、2名、子供2人、3人だと、多分1つの部屋じゃ収まらない。ほとんどのホテルだと
北:3人いちゃまずいって言いますね。
董:できないでしょ?
北:まずいって言い方はあれですけど、2つ部屋が必要で、
董:とりますよね。どうしてもネットで予約するときも、なかなかそういうホテルを検索しても出てこないわけですよ。車もそうなんです。5人と6人が、乗る車種も違うわけですね。じゃあその研究室マネジメントの時にその線引きというか、だいたいどのくらいの
北:なるほど、わかりやすい!
董:人数が線かというと、私個人的に、うちのグループって成長してきて拡大してきたわけですから、どの瞬間のどのグループのサイズの瞬間は、全部把握しているわけですね。そうすると、だいたい20人ぐらいが1つのこの質の変化の仕方は、ターニングポイントかなと思ってて、今50人じゃないですか?
北:はい。
董:もうちょっと、この今の体制だともうちょっとエクスパンド(expand:拡張)できると思うんですけど、本当に100人になった時に、おそらく違うこのシステムを導入して最適化しなきゃいけないかなと思っているわけですよね。
北:へぇ、なるほど。
董:経験でそれが見えてきてるように。
北:なるほど。ちなみにそれ3人で50人だから、あと10人ぐらいというイメージですか?そういう計算されてます?
董:そうですね。そうですね、60人、70人ぐらいはいけるんじゃないかなと思ってますね。
北:そうすると、20、まあまあ今のサイズ感で、もうちょっといけるかなって思っている一方で、こうじゃあ、新たなアポイントメントにもやりたい、というふうに思うとまた別分野になるので、そうするとさっき言ってた20人が感覚値、うまく回る人数観っていうのは、またそれは別の話というか、また違う、全く違う大学でのアポイントメントっていうのは、振り出しに戻るというか、感覚が違う、孫ができるみたいなのか、違うのかなという。あとはご性格と、マネジメントの手法とか好みのやり方みたいな、結構複数のラボを持ってらっしゃる方もいらっしゃると思うので、
董:拠点ごとに20人が1つのあれかなと思ってて、拠点A、拠点B、拠点Cで合わせてどうのこうのっていうよりも、この1つのこのフィジカルにあるグループが20人が1つのシステム、その20から50とか60が1つ、というような感じかなと思います。
北:なるほど。
北: 董冕雄さんと太田香さんをゲストにお迎えしてお届けしているエピソードの前編はここまで。いかがだったでしょうか。私は最初の方で伺った董先生の東日本大震災のご経験をきっかけに通信研究を志されたという話が非常に印象的でした。
また、脳のEEGデータを用いて物を動かす研究ですとか、夢の再現に挑んでしまうような、そういった新しい研究はすごくワクワクしました。社会に実装される研究を行うという強いミッションと面白い、探求したいという純粋な好奇心の両方を大切にされて研究をしているというお2人の姿勢が様々なお2人の研究を進めていく原動力となっているんだなと、改めて感じました。
さらに研究の進め方というのも、2人の研究室はグループとして、複数の研究室が強みを補完し合いながら研究を進められているという点も大きな示唆を感じました。この卓越性と組織としての連携を両立させながら研究に取り組まれているのが大変印象的でした。
後編では、なぜお2人が研究者になろうと思ったのか、研究の世界へ飛び込んでいった原点、そして現在の研究にかける熱い思いまで、深く探っていきたいと思いますので、後編もぜひチェックしてみてください。
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